バリアフリーリフォームの費用相場は?気をつけるべきポイントなどを解説
最終更新日:2025年6月6日
高齢者や車椅子を使うなど介護や介助を必要とする方がいるご家庭の中には、住み慣れた自宅でも不便を感じることが増えていないでしょうか。特に足が上がりにくい高齢者は、段差によるつまずきや階段からの転倒などでケガをする可能性が高まり、安心して暮らせる住まいではなくなります。
リフォーム
経験者
Yさん
- 階段、リビングの壁に手すりをつけるリフォームをしました。以前から祖母の足が悪くなってきて、トイレや寝室に行くために階段を上るのが大変だと言っていました。骨も脆くなってきて、しかも階段でよく転んでしまっていたため、私も心配になっていたのと、一緒に暮らしている家族がトイレなどに毎回付き添わなければいけなくて大変だったこともきっかけです。
バリアフリーリフォームは、「バリア(障壁)をフリー(なくす)にすることで、つまずきや転倒をなくし、安心して暮らせる住宅にすることです。本記事では、バリアフリーリフォームの費用相場や種類、選び方などを詳しく解説します。
監修者:
一級建築士
林 由紀子
- バリアフリーリフォームは、「今の困りごと」だけでなく、「これからの暮らし」を見据えて計画することが大切です。たとえば玄関や水まわりでは、段差をなくすことに加えて、出入りのしやすさや通路の広さにも気を配りたいですね。車椅子を想定する場合は、75cm以上の幅があると安心です。ご家族の皆さんが、年齢を重ねても心地よく過ごせるよう、いまから“少し先の未来”を見つめながら、住まいを整えていきましょう。
バリアフリーリフォームの費用相場
はじめに、バリアフリーリフォームの費用相場について解説します。なお、バリアフリーの工事内容によって費用が異なる点に注意が必要です。
バリアフリーリフォーム場所別の費用相場
バリアフリーリフォーム費用は、手すりや滑り止めの設置といった小規模工事からドアや床の交換、段差の解消、トイレ交換、浴槽交換といった大規模な工事に分けられます。今お住いの自宅で想定される危険を確認し、リフォームが必要な場所を見極めることが大切です。
バリアフリーリフォーム場所別の大まかな費用は次のとおりです。なお、リフォームの範囲によって費用が異なるため、注意が必要です。
玄関 |
20,000円~620,000円 |
浴室 |
20,000円~950,000円 |
トイレ |
20,000円~370,000円 |
廊下 |
20,000円~90,000円 |
階段 |
40,000円~350,000円 |
バリアフリーの種類と種類別参考価格
バリアフリーといっても、リフォーム内容によって価格は変わります。ここでは、一般的なバリアフリーの種類とリフォーム内容について説明します。
バリアフリーリフォームの種類
バリアフリーリフォームの種類は、大きく分けて5種類あります。
- バリアフリーリフォームの種類
-
バリアフリーリフォームは、段差解消という対策だけでなく、ケガや事故防止や自立した生活の補助、介護環境の整備という目的があります。
玄関
段差が多い玄関では、次の内容を検討することになるでしょう。家の出入りをスムーズに行うことがポイントです。
- 玄関のバリアフリーリフォーム例
-
- スロープ設置
- 手すり設置
- 引き戸へのドアの交換
- 滑りにくい床への交換
浴室
浴室内の転倒事故などを防ぎ、安全性を高めるリフォームがポイントです。浴室は足元が滑りやすく転倒事故の可能性が高いため、転倒防止を防ぐ対策が必要です。
- 浴室のバリアフリーリフォーム例
-
トイレ
使用頻度の多いトイレは、安全に立ち座りの動作ができ、身体の負担を軽減させることが大切です。
- トイレのバリアフリーリフォーム例
-
- 手すり設置
- ドアの交換
- 床の交換
- 洋式トイレへの交換
手すりを設置し、開閉しやすい引き戸のドアに交換し、足腰に負担がかかる和室トイレから洋室トイレに交換するなど、高齢者にとっての大切なリフォームです。
監修者:
一級建築士
林 由紀子
- 浴室やトイレのリフォームでは、「どのように使うか」を丁寧にイメージしてみることが大切です。立ち座りや体を洗うなどの動作を実際にイメージして、手すりの位置や高さも使う方の体格や動きに合わせて調整すると、より安心して使える空間になります。また、水はけのよい素材を選べば、お掃除の負担が減り、カビの発生も抑えられます。毎日使う空間だからこそ、衛生的で心地よく、負担の少ない設計を意識してみてくださいね。
廊下
住まいの動線となる廊下のバリアフリーリフォームは、安心・安全な移動を確保するためにも必要です。
- 廊下のバリアフリーリフォーム例
-
トイレと同様、日常生活で使用頻度の多い廊下も転倒防止のためにも検討しておくべきリフォームです。
階段
2階建ての一戸建て住宅では、上下移動の際の転倒や転落などの大怪我の原因になるため、階段のリフォームも必要です。
- 階段のバリアフリーリフォーム例
-
特に高齢者の夜間の移動は、視認性の低下にも配慮する必要があるでしょう。
バリアフリーリフォームの種類別の参考価格
バリアフリーリフォームの種類別の参考費用をまとめました。
なお、標準的な工事でも使用する材質や壁の補強の有無によっては追加費用となる場合もあるため、注意しておきましょう。
バリアフリーリフォームの種類 |
費用(標準的な工事の場合) |
手すり設置 |
20,000円~(1本あたり) |
スロープ設置 |
100,000円~200,000円 |
ドアの交換 |
50,000円~200,000円 |
床の交換 |
50,000円~100,000円 |
滑り止め設置 |
50,000円~200,000円 |
段差解消 |
20,000円~150,000円 |
浴槽の交換 |
500,000円~1,000,000円 |
洋式トイレに変更 |
150,000円~570,000円 |
バリアフリーリフォームで後悔しない費用のポイント
バリアフリーリフォームで後悔しないためには、次の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 概算費用を決めておく
- 生活スタイルの変化を見据える
- 複数の業者から選ぶ
概算費用を決めておく
リフォームの概算費用を予め決めておくことが後悔しないポイントです。費用をかけすぎると、今後の生活資金に余裕がなくなります。また、費用を削りすぎるとリフォーム後の暮らしに不便さが残ります。さらにギリギリの費用でリフォームすれば、追加費用が発生した場合に対応が困難になるでしょう。
バリアフリーリフォーム費用はしっかりと資金計画を立て、生活に支障のない範囲で行うことが大切です。なお、リフォームローンなど金融機関で一部の費用をまかなう際は、無理のない返済計画を立てることも必要です。
生活スタイルの変化を見据えておく
生活スタイルの変化を見据えてリフォームを考えておくことも後悔しないポイントの一つです。将来の家族構成や年齢構成を考慮しておかないと、子供の独立後や夫婦の老後の生活に不便さを感じる住まいになることも考えられます。
バリアフリーリフォームは、家族の暮らしが安全で住みやすい環境づくりのために行います。自宅内のすべてをリフォームするのではなく、家族の状況に合わせて少しずつリフォームするなど、使いやすさや必要な人に合わせて行うことが後悔しない費用になります。
複数の業者から選ぶ
複数の業者から選ぶことも後悔しない費用の大きなポイントです。バリアフリーリフォームの種類や具体的な内容を決めて見積もりを取り、複数の業者で比較検討することは費用を抑えるために必要です。口コミや安さだけで業者を選べば、品質の低いリフォームになる可能性が高くなります。
業者選びにはアフターサービスの有無も確認しておきましょう。リフォーム後のトラブル発生時の対応が疎かな業者では想定外の出費になることも考えられます。契約前には複数の業者から見積もりを取り、費用相場を確認しながら、質の良い提案やサービスが受けられる
1社だけに依頼することが大切です。
監修者:
一級建築士
林 由紀子
- 見積もりをお願いするときは、金額だけで判断せず、どんな提案をしてくれるか、使う素材の質や施工実績もしっかりと確認しましょう。バリアフリーの経験が豊富な業者さんであれば、暮らしに寄り添った細やかなアドバイスをしてくれるはずです。過去の施工事例を見せてもらったり、実際のお客様の声を聞いたりするのもおすすめです。安心して任せられるパートナー選びが、満足のいくリフォームへの第一歩です。
バリアフリーリフォームの選び方や
種類別メリット・デメリット
ここでは、バリアフリーリフォームの選び方や種類別メリット・デメリットを紹介します。
バリアフリーリフォームの選び方
バリアフリーリフォームの選び方のポイントは8つあります。
リフォームする前にチェックしておきたい内容です。リフォームをお考えの際や、見積もりを考える際にポイントとして押さえてみてくださいね。
- 外出がしやすいか
- トイレや浴室は利用しやすいか
- 日常生活での動線は確保できているか
- 必要な箇所はバリアフリーになっているか
- 設備は使いやすい位置にあるか
- 光や音、匂い、湿度管理は適正か
- 自治体の補助金制度は利用できるか
- 介護保険制度で補助金制度は利用できるか
バリアフリーリフォームのメリット・デメリット
リフォーム
経験者
Uさん
- まずしっかり家族と意見を擦り合わせてから工事をした方がいいです。
私の場合リフォームをしよう!これとこれは必要だよね、とりあえず話をしに行こう!みたいにリフォームをしたいということ以外ほぼ何も決めずに電話をかけました。
後でやっぱりここの手すりはいらないと思うや金額が高いから作らなくていいよ、という感じにやっぱり辞めたい…みたいな意見と、どうせならここもつけた方がいいんじゃない?やこの機能もつけたい!みたいに後から色んな話が出てきて全然話が進まなかったです。
リフォーム
経験者
Hさん
- 普段の生活や動線の見直しが大切だと思います。我が家は広めの通路を確保して、車椅子や歩行器を使っても問題なく移動できるようにしてもらいました。
バリアフリーリフォームで生活環境を改善できるというメリットは大きいですが、実はデメリットもあります。
- バリアフリーリフォームのメリット
-
- 高齢者だけでなく家族全員の安全な生活環境になる
- 身体的、精神的に自立心が向上する
- 介護者の負担が軽減できる
- バリアフリーリフォームのデメリット
-
- 必要なリフォーム場所の見極めが難しい
- リフォームの内容によっては費用が高額になる
- 過剰な設備は快適性を損なう可能性がある
施工までの主な日数と流れ
バリアフリーリフォームの一般的な施工日数と流れについて紹介します。なお、リフォーム内容によっては施工日数が異なるため、施工業者に確認しておくとよいでしょう。
施工日数
リフォームの種類ごとの施工日数(目安)は、次のとおりです。
手すり設置 |
0.5~1日 |
スロープ設置 |
5~8日 |
ドアの交換 |
0.5~1日 |
床の交換 |
1~2日 |
滑り止め設置 |
0.5~1日 |
段差解消 |
1~2日 |
浴槽の交換 |
5~7日 |
洋式トイレへの交換 |
2~4日 |
複数の場所でのリフォームの場合は、施工日数は変わります。
施工までの流れ
バリアフリーリフォームの施工完了までの流れは、次のとおりです。施工業者選びと補助金の事前申請が大切です。
- 複数の施工業者に見積もり依頼
- 施工業者と契約、補助金事前申請
- 施工確認
- 支払い
- 補助金受取り
まとめ
バリアフリーリフォームの種類は数多くあり、設置内容によって費用や日数が必要です。また施工業者も多いため、慎重に選ぶ必要があります。過剰な設備のリフォームは後悔する可能性があるため、必要な場所ごとに段階的にリフォームすることがおすすめです。
監修者:
一級建築士
林 由紀子
- バリアフリーリフォームは、単に「不便をなくす」ためだけでなく、「これからの暮らしを、もっと心地よく整える」ための住まいづくりです。手すりやスロープも、最近では空間に調和するおしゃれなデザインが増え、暮らしの中に自然と溶け込むようになっています。せっかくのリフォームですから、ご自身の好きな色や素材を取り入れて、毎日が少し楽しくなるような、お気に入りの空間をつくってみるのも素敵ですね。バリアフリーは、どの世代にもやさしい“思いやりのかたち”。今だけでなく、5年後、10年後も安心して暮らせる住まいを整えていきましょう。

林 由紀子
合同会社higoto 副代表
一級建築士、整理収納アドバイザー準一級
- 大阪府出身。大学卒業後、大手ハウスメーカーで住宅設計や資材開発に携わり、在職中に一級建築士資格を取得。2020年、主人の地元・香川県高松市へ家族とともにIターン移住。中古住宅を購入し、自ら設計・リノベーションした家で、主人と、小学6年生・3年生・1年生の3人の子どもたち、ゴールデンレトリバーと暮らしています。子育て世代ならではの視点を活かし、家族みんなが心地よく過ごせる住まいや暮らしを提案しています。